映画感想「オールド」
2021年公開のSFスリラー映画。監督は「シックス・センス」で一世を風靡した奇才M・ナイト・シャマラン。主演はガエル・ガルシア・ベルナル。完全オリジナルでなく、フレデリック・ペータースのグラフィック・ノベル「Sandcastle」を原案にしているそう。公開時にシャマラン好きな知人に誘われたのだが、コロナ禍など色々あって観るのを断念していた作品。Amazon Prime Videoに入ったので視聴。
あらすじ
夫のガイ、妻のプリスカ、マドックスとトレントの姉弟の四人家族は、家族旅行で人里離れたリゾート地を訪れていた。そこには他の客もたくさん訪れており、6歳のトレントはオーナーの甥だという子供イドリブと仲良くなる。子供たちと戯れる夫ガイ、しかしその姿を見つめるプリスカの表情はぎこちない。実は二人は離婚することを決めており、旅行は二人と子どもたちのための最後の思い出作りだったのだ。
翌日、朝食を取っていた家族のところへオーナーが現れ、「他のお客様方には内緒で、プライベート・ビーチにご案内します」と言ってくる。一家は他に選ばれた家族とともに断崖の隙間を通ってたどり着いたビーチでくつろぐのだが、なんと水死体を発見してしまう。携帯で警察を呼ぼうとするが電波が圏外になっており、断崖の隙間を戻ろうとするも、なぜか酷い頭痛に見舞われビーチへ戻ってきてしまう。断崖に囲まれたビーチに「閉じ込められた」複数の家族たちは、やがて自分たちがものすごいスピードで「老化」していることに気づく……というのが序盤の流れ。
感想
シャマラン監督は、唯一無二の強い作家性を持ちながら、非常に賛否両論の激しい評価の監督である。作品の傾向としては、「これまでのことね……実はこういうことだったんです!(ドヤァ)」みたいな落ち部分の驚きの比重が高く、そこに至るまでの内容にのれないと「あーはいはい」となってしまう作風の人……というのが個人的な印象。自分も子どもの頃に「シックス・センス」を観たときはけっこう衝撃を受けた記憶はあるのだけど、その後大人になってから「アンブレイカブル」でがっかりして以降、他の作品はまったく観ていなかった。
そんなイメージなのであまり期待していなかったのだけど、今作は個人的にむしろ最後のどんでん返しはどうでもいいくらいには道中が面白い作品だった。急速に老いていくという謎の状況下を打破しようともがく人間模様と、そうなったときに何が起こるのかというシチュエーションにあったハプニングをちゃんと出しており、そこは(後で冷静になって考えると、老化する/しないが曖昧で粗はあるんだけど)面白い。
老化の進みが早いということで、一つ一つの出来事の余韻がないまま次の出来事が起こるところはギャグのようにすら見えてしまうのだけど、あっという間に寿命がきてしまうという恐怖だけでなく、それによって離婚寸前だった夫婦の関係にも変化が訪れるなど、ちゃんと家族の物語が描かれているというのも良かった。
この「急速に老いていく」という設定、荒唐無稽と思いつつも自分の人生や残された時間について否応なしに考えさせられる「大技」であると個人的には思う。SF小説家として著名なレイ・ブラッドベリの短編「霧と炎」という話もまさに「急速に老いていく世界」をネタにした話で、自分はこういう話が刺さってしまうのかもしれない。
それでも、あくまでそういった含蓄的な部分にフォーカスせずシチュエーション・スリラーとして内容を進めるため、説教臭くもなく自然に受け取ることができた。とはいえ設定にツッコミどころが多かったり、良く考えると都合のいいことばっかり起こっていたりするので、そういうところがノイズになってしまうとのれない作品になってしまうのかも。
まとめ
というわけで、伏線やどんでん返しに燃える男シャマラン(個人的な印象)の、家族物語。いつもの感じといえるのかもしれないけど、テーマがわかりやすく個人的には当たりのシャマラン作品でした。
画像:© 2021 Universal Studios and Perfect Universe Investment inc.
Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B09S2WS2X5
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