映画感想「シルバー・サドル 新・復讐の用心棒」
1978年に公開されたマカロニ・ウエスタン。主演はマカロニ貴公子ことジュリアーノ・ジェンマ。監督はルチオ・フルチ。先日観たフルチ監督作品「荒野の処刑」に続き、この作品もAmazon Prime Videoで配信されていたので視聴。
ストーリー
荒野の奥からゆっくりと近づいてくる二人の父子。父親は地主のバレットとその仲間ルークに騙され、財産も妻も失ったのだった。ルークを見つけ詰め寄る父親だが、彼は意に介さない。怒りのあまり撃ち殺そうと銃に手を伸ばした途端、ルークは子供の目の前で父親を射殺。しかし、子供だったロイは父の銃でルークを撃ち殺し、彼の馬に乗って逃走する。
数年後、ロイ・ブラッドはガンマンとして生き延び、それまでルークのものだった「銀の鞍(シルバー・サドル)」はロイのトレードマークとなるほど有名になっていた。あるとき彼は荒野で出会った死体漁りの男スネークから、一人殺すだけで2000ドルという大金の仕事を持ちかけられる。最初ロイは依頼を断るが、相手がバレット家の人間トーマス・バレットであることを知ると、復讐のためにその殺しを引き受ける。墓場でバレットを待ち伏せするロイ。馬車から降りてきたその人物に銃口を向けるが、それはまだ年端もいかない少年だった。躊躇うロイだが、その少年を撃ち殺そうとする賞金稼ぎたちの存在に気づき、彼らから少年を守る。助けた少年の名はトーマス・バレット・ジュニア。トーマス・バレットの甥だったのだ……というのが序盤。
感想
Wikipediaによると、本作はルチオ・フルチ最後のマカロニ・ウエスタン作品であり、同時にジェンマが最後に出演したマカロニ・ウエスタンでもあるとのこと。先日の「荒野の処刑」があまりにアバンギャルドで尖った作品だったために身構えていたのだけど、別の意味で驚かされた。冒頭で紹介したストーリーのあと、ロイはバレット家の人間だとわかったトーマス・ジュニアを突き放すのだが、ジュニアは命を救ってくれたロイを健気に慕う。やがてロイはジュニアの姿に家族を失った幼い頃の自身を重ね放っておけなくなり……と、なかなかにキャッチー。その後の話もマカロニ・ウエスタンの文法として王道というか、ダークさは薄いがしっかりとした娯楽西部劇となっている。この後「サンゲリア」で名を馳せるルチオ・フルチらしくないというと失礼だが、イメージからはかけ離れた内容であり、しかも話としてよくできているのだ。
まず本作はアクションシーンに力が入っている。スタントマンでもあったジェンマの飛び撃ちは相変わらずカッコいいし、大勢の敵に囲まれたときに即席であるブツを作って対処するシーンでは、デタラメというわけでもなく実際に可能なレベルの方法であり「へー!」と思わされた。登場人物もジェンマ演じるロイはしっかりと影のあるヒーローで貫禄があるし、彼につきまとう男スネークはいかにもマカロニらしいコメディ・リリーフであり食えない人物。どうしようもないやつかと最初は思ったけど、やるときはしっかりやるのがよかった。トーマス・ジュニアはあどけないながらも利口なお坊ちゃんだが、しっかり子供らしい行動から窮地に陥るし、さらわれたり鞭で叩かれたりなどなかなか大変な役。子供に理不尽な暴力が振るわれるあたりはフルチ味でありマカロニらしいところ。クライマックスの切り札もよくできているし、謎解きを含んだストーリーもベタながら引きがあってよかった。
まとめ
というわけで、巨匠によるしっかりとした王道マカロニ・ウエスタン。初期マカロニにこびりつくダークさも薄め、しかも「フルチといえば」という残酷な描写こそ少ない(ないわけではない)ものの、内容のキャッチーさ、展開の王道さは作る側の映画力の高さを感じさせる。そういう意味では比較的安心して(?)見られる作品。
画像:© 1978 Rizzoli Film
Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08WG4LLG3
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