映画感想「バトルヒート」
2015公開の、アメリカ合衆国とタイ王国の合作。ドルフ・ラングレンとトニー・ジャーというアクション・スターW主演のアクション・ムービーで、監督はエカチャイ・ウアクロンタム。ラングレンは脚本や制作にも携わっている。Amazon Prime Videoにて視聴。
ストーリー
ニュージャージー警察のニック刑事(ラングレン)は、ロシアで暗躍する国際的人身売買組織のボス、ドラゴビッチが来るという情報を掴む。同じ頃、タイのバンコクでトニー刑事(トニー・ジャー)は同じ組織に囮捜査を仕掛け、ニュージャージーの港に東南アジアで集めた彼らの「商品」が運ばれるということを掴む。その情報はアメリカに共有され、ニックはFBIの人身売買撲滅班のリード捜査官らとともにドラゴビッチが港にいるところへ乗り込む。激しい銃撃戦の最中、追うニックと逃げるドラゴビッチ。その際、父を助けようと勇んだドラゴビッチの三男アンドレをニックは射殺する。結果ドラゴビッチは逮捕されるが、「俺を殺さなかったことを後悔するぞ」とニックに凄むのだった。
ひと仕事終えた彼は愛する妻と娘がいる自宅へ帰宅するが、その日の夜に家が襲撃されてしまう。炎に包まれる家の中で妻子は襲撃者に銃撃され、ニック自身も銃弾を受け瀕死の重傷を負うが奇跡的に助かった。集中治療を受ける中で、ニックはリードから妻と娘が助からなかったことと、ドラゴビッチが釈放されたことを知らされる。おそらく買収されたであろう外交官や判事が、保釈を認めてしまったらしい。復讐の獣と化したニックは傷が癒えぬうちに病院を抜け出すと、崩壊した家から武器を見つけ外交官らを襲撃。彼らから「ドラゴビッチはカンボジアのポイペトにいる」ことを聞き出すと容赦なく皆殺しにし、一人カンボジアへ向かうのだった……というのが序盤。
感想
いわゆる午後ロー的なB級アクション作品。「ロッキー4/炎の友情」で有名になり、個人的には「ユニバーサル・ソルジャー」での怪演(吹き替え)が心に刻まれている筋肉俳優ドルフ・ラングレンと、2003年に「マッハ!!!!!!!!」で世界に躍り出たトニー・ジャーが共演している。二人とも現在に至るまで主にアクション映画で俳優として(ラングレンは制作業も)活躍しているが、ラングレンはこの映画が公開された頃の前後からガンによる闘病生活が始まっていたらしい(2023年現在はかなりよくなっているそう。よかった)。
この手の主張が強い俳優同士のW主演となるとどちらかがどちらかを食ったり差別化が難しいものだが、本作はそのあたりのバランスが良いように感じた。ラングレンは顔の痕が生々しい、復讐に燃える強面大男で実に「らしい」感じに仕上がっているし、トニー・ジャーはアクロバット・アクションで魅せる、正義感が強く友情に厚い好青年刑事で差別化されている。本作のえらいところは、その二人をかなりじっくり、ちゃんと戦わせるところ。二人が戦う筋書きは多少ねじ込みすぎな気がしないでもないが、動機としては納得がいく。そしてやっぱりアクション俳優が2人出てきたら戦うのはお約束。特にトニーが彼を殺しにかかる理由はちゃんとあるので、それなりに緊迫した戦いに見える。
それに、敵の造形も主演二人に負けていないのも本作の良いところだと思う。中でもロン・パールマン演じるドラゴビッチは、人身売買なんかして良心はないのかという問いに「買うやつがいるから売る」と言い放つ冷酷な男。しかし自分の家族の死にはショックで気落ちするという非常に人間くさい悪党でもある。終盤で自身の家族に向けた「悪の呪い」ともいうべき彼の言葉など、演じるロンの凄みもあってなかなか印象強いキャラクターになっている。またラングレンとトニーに立ちはだかるもうひとりの人物が予想外に強いなど、意外性もあってよかった。舞台が主にタイとカンボジアになり、町並みを奔走するシーンなども物珍しさがある。ただ物語が動き出す前の部分と、ラングレンとトニーの敵対パートが大半を占めるため、この手の作品のもう一つの見所である、主演二人の共闘や絡みの割合が少なめになってしまっているのは惜しいところ。
まとめ
というわけで、スウェーデンとタイのアクションスターW主演作品。ラングレン制作なだけあってイメージ通りのラングレンをやり通しているし、トニー・ジャーの役どころも良い。人身売買(主に少女の)を題材にしているため、そういう現場での描写がそれなりにあり、物語も笑い控えめでシリアス寄り。個人的には、とにかくズタボロなラングレンの顔がたまらないのでよし。
画像:© 2014 SC FILMS THAILAND CO., LTD
Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B073HFLLF1/
CNN日本版記事「ドルフ・ラングレンさん、がん闘病を明かす」
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35203706.html
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