2023年版:AI画像生成についての感想

以前「『Stable Diffusion』を触ってみた感想」という記事で、当時話題になっていたAI画像生成を実際にやってみた感想を書いたことがありました。そこから1年ほど経ちましたが、その間にAI画像生成界隈で様々なことがあり、当時と考えも変わってきたのでここらで振り返ってみたいと思います。なおAI生成技術全般ではなくあくまで画像生成にしぼっての感想です。

素材ではなく商品そのものになった

最初に書きますが、以前の記事で予測していた未来と現在を重ねてみると技術は発展したもののそれに使い方がついていけなかったと考えています。まず、AIによって生成された画像(主にキャラクターイラスト)が大量生産され、人目に触れるようになっていったという点。これは昨年の段階からすでに作品を発表、研究している人がいたので、まあこっちメインで発展はしていくだろうなとは思っていました。
私自身は先述の記事以降画像生成AIを触ってはいませんでしたが、あの後よりクオリティの高い所謂「アニメ美少女」っぽいものが生成できるようになり、さらに人体のポーズや構図を指定して生成できる技術も発表され、ある程度頭で描いた絵にかなり近いものを生成することが可能になったのではないかと思います。ただ技術がとんでもない速さで進んでいく一方、アーティストやクリエイター、あるいは企業がAIで生成された画像を利用するより早く、金の臭いを嗅ぎつけた一部の人によってAI生成画像それ自体がマネタイズ(金儲け)の道具に使われるというのが主流になってしまったという印象です。

私はAIによって生成された画像が「商品の一部」、つまり「素材」として利用されるのではないかと思っていたのですが、結果的には生成された画像が「商品そのもの」になっていきました。画像自体が商品の「主」部分として世に広まった結果、これによって「AI画像生成」の問題が明らかになります。
多くの画像生成AIはネットの画像を無断で学習しており、使い方によっては「特定のアーティストの作風を再現でき、そのアーティストが作品を作る時間を遥かに凌駕する速さで画像を大量生成できるという、「作風の剽窃とばらまき」が簡単にできてしまうのです。こうした画像の権利者に許可を取らずに機械学習させる行為は「無断学習」といわれます。字面だといかにも法律に触れているように見えますが、2023年9月現在の日本の著作権法においてはAIが機械学習をするぶんには権利者の許諾は原則不要となっており、さらに営利非営利関わらず可能となっているようです(ただ完全にセーフとなるには条件が膨大で、基本的にはグレー)。現状法的に違法でないとなると、当然「やったもん勝ち」状態となります。
こうした行為は当然、作風をコピーされたりマネタイズの餌にされたりするアーティスト側からすればたまったものではありません。一部のアーティストは無断学習されないために自身の作品を非公開する、といったことも行ったです。そうしたことがあった結果、「pixiv」のようなクリエイター支援サイトを運営する企業はAI生成された画像で支援を募るのを禁止しました。こうしてAI画像生成による主なマネタイズ経路が封じられ、今は一時的に落ち着いているというのが大きな流れだったと思います。

大量消費されていったAI画像

2022年の記事を書いたとき、私はこうした形で特定のAI学習元が「割を食う」事態が利用者によって恣意的に引き起こせるところまで考えが及んでいなかったと言わざるを得ません。当時から「アーティストが仕事を奪われる」という懸念の声はありましたが、クオリティが上がったとしても機械が生成する以上そのままでは正直「あればいい」レベルのものにしかならないだろうと思っていました。むしろ「あればいい」を素材として、アーティストやクリエイターらがどう配置、改変していくかという使い方が一番有効的に使う方法になるのではというのが私の予想でした。
先述の無断学習問題を含め、現状は機械学習される側に対して保護といったものはなく、心情的にそこを蔑ろにするのかというひっかかりは依然としてありますし、さらにネット上の画像にはアーティストだけでなく権利者の同意なく拡散されているものもあります。法的に「完全な」セーフでないとなってくると、利用する側の企業としてもリスクを考えると二の足を踏むのも当然な気がします。そんな事情もあってか、個人的に増えると思っていた「AIによる生成物を素材として使用した製品」は、1年前と比べても(おそらくあるんでしょうが)現状あまり耳にしていません。
反対にAI生成画像単体は一時期SNSやネットで大量に見かけましたが、その結果「AI生成画像」自体が急速に消費され飽きられた印象。最初期は「こんな絵が生成できた」で喜んでいたのが、ある程度望んだ内容のものが生成できるようになり、今度はそれを量産できるようになると、ほとんどの人にとってAIで画像生成の楽しさはそこで頭打ちになってくると思います。特に暴れ回っていた金儲け勢が消えたことで、現状はだいぶ落ち着いたのではないかと思います。

まとめ

というわけで、個人的にはやはり学習データに関する問題やイメージが解決しない限り、使う側も気持ちよくAIを使えないのではないかと思いますし、見る側もそうしたことがノイズになって楽しめない気がします。機械による学習と、人が人力で絵柄を模倣し取り入れようとするのとは再現性と時間の面で同じものと括るのは無理があります。私が考えていた画像「素材」としての活用も、この問題が解決しない限り難しいでしょう。どのような解決策がよいのかまったく思いつきませんが、せっかく研究されてきた技術なのでうまい付き合い方ができるようになることを望みます。

ちなみに、実は今回のAI画像生成の話から「別のAI生成サービスを使ってみた」という内容にする予定だったんですが、ボリューム的に画像生成の話だけで終わってしまったので次回(か別の機会)に回します。