ゲーム感想「都市伝説解体センター」

2025年2月23日

2025年2月にリリースされたミステリーアドベンチャー。開発は日本のゲームクリエイターチーム、墓場文庫。販売は集英社ゲームズ。プラットフォームはPC、Nintendo Switch、PS5。Steam版でプレイ。

ストーリー

犬神大学に通う福来あざみが、怪異な悩みを解決する「都市伝説解体センター」を訪れるところから物語は始まる。彼女には人には見えない霊のようなものがぼんやり見える悩みがあったのだ。幽霊だと思っていたあざみだが、都市伝説解体センターのセンター長、車椅子に座る廻屋渉は「それは場所に残った人の念だ」といい、ある眼鏡を手渡す。それをかけたとたん、ぼんやりしていた人の念がはっきりと視え、あざみの「念視」の力が覚醒。そうしたやり取りの際にあざみはセンター内にあった貴重な椅子を壊してしまい、弁済のため半ば強制的に都市伝説解体センターの調査員として都市伝説に絡んだ事件を調査しに奔走することになる……というのが導入。

感想

面白かった。ストーリーに関して何がどうというネタバレはしないが、とりあえず「都市伝説」と銘打ちつつも実際にはそうした前提知識のようなものはほぼ必要なく、普通に先の読めないミステリーADVとして楽しむことができる。
本作で目を引くのはとにかくドット絵で表現されたアニメ調グラフィックだろう。キャラクターデザインはキャッチーで、キャラの立ち絵グラフィックも表情豊か。何より止まっている状態を探す方が大変なくらい、絵がよく動いている印象。反面ゲームパートのグラフィックはどちらかというと記号的なんだけど、基本的にキャラクターの立ち絵やデモシーンなどの割合が高く気にならない。随所に差し込まれる演出シーンも相当気合が入っており、ゲームというよりアニメや映画的なカメラカットが多用される。

福来アザミ（手前）と、先輩調査員ジャスミンの移動シーン。
ほとんどの場面でこうしたカットにドットならではのアニメーション演出がある。

また個人的に驚いたのが、これだけ画力の強い画面にも関わらず（というかだからこそなのかもしれないが）ドット絵の粒が大きく表現されている点。私はいわゆるドット絵が凄いゲームというと粒が細かくて細かい表現のものというイメージが強かったため、本作のドットが大粒にも関わらず画面としてとても魅力的に成立しているのはすごいと思った。このデザインは制作に携わったグラフィック・デザイナーのハフハフ・おでーん氏の拘りだそうで、Steamページのニュースでそれら制作手法について語られている。

ADVとしては人物への聞き込みや場所の調査、さらに念視による残留思念などを調べていくというオーソドックスなもの。総当たりでクリアでき、失敗してもとくにペナルティはない。ところどころ用意されている穴埋め問題や選択肢は、ストーリーに対する理解の確認として機能しているといってよい程度の難しさ。物語を読ませるというテキストアドベンチャーゲームとしては至極まっとうな仕様だが、これはそれだけ物語に自信と引きがあってできるもの。
物語の流れはストーリー紹介でも書いたが、主人公の福来あざみが都市伝説解体センター長の廻屋渉の指示で調査依頼をこなしていくというもの。１話ごとに異なる調査依頼は最初一見要領をを得ないものだが、その依頼者に対するそこにネットで有名な都市伝説が絡んで……みたいな話。SNSの闇や負の側面をテーマとして描きながら、一つの都市伝説事件を「特定」そして「解体」することで大筋の物語が進行していく。一つ一つの事件に関わる話やメインストーリーも含め、クライマックスの盛り上がりは見事。毎回事件の終わりに次回への伏線シーンとともに差し込まれるテーマソングもいい感じ。
唯一、アプリケーション終了がタイトル画面でなくオプションの中に入っているのが少々煩わしかったが、全体としてそんなことなど気にならなくなるくらいには物語で楽しませてくれた。