ゲーム感想「Axiom Verge」

2020年9月13日

2015年に発売された横スクロール探索アクション。Thomas Happ Games開発。
PCのほか、Nintendo Switch、Play Station 4などで遊ぶことができる。
「Axiom Verge」はいわゆるメトロイドヴァニアである。メトロイドヴァニアとはゲームのサブジャンルで、任天堂の「メトロイド」シリーズやコナミの「悪魔城（キャッスルヴァニア）」シリーズの探索要素を含んだゲームを指す造語。
メトロイドヴァニアジャンルの大まかな要素として「横スクロールアクション」「ゲームマップのすべて（ほとんど）がつながっている」「ゲーム中、任意のタイミングでいつでも戻ることができる」「シナリオ進行や、道中手に入れた新たな能力やアイテムで行動可能範囲を拡大していく」といった点があげられる。
これらは「マップを探索して地図を埋めていく」要素と親和性が高く、上記二つのゲームを含め多くのメトロイドヴァニアでは地図が取り入れられている。この作品も違わず上記の要素がすべて入っており、メトロイドヴァニアとしてはかなり王道の作りになっている。

主人公である科学者のトレースは、科学実験の最中に爆発に巻き込まれ、気がつくとまったく見知らぬ、地球上とは思えない場所にいた。頭に響く声に導かれ、奇妙な形状の銃を手に取り、エイリアンが跋扈する世界を探検することになる、というストーリー。
ゲームの操作感は横スクロールアクションゲームとしてクセがなく、とても遊びやすい。左右移動にジャンプ、八方向への射撃と、特殊スキルの使用などがある。特に八方向射撃やスキルについては、自機移動を制御するロックボタンを押すことで、その場に立ち止まったまま（ジャンプは可能）好きな方向に撃てるなど、かゆいところに手が届く設計。ちなみにキャッスルヴァニアのようなレベル制ではなく、どちらかというとアクション面やビジュアルで「魂斗羅」シリーズの影響が感じられる。

また、このゲーム独自のアクションとして、特殊な壁や硬いものを砕く「ドリル」や、敵や環境をバグらせる「アドレス撹乱機」といったものがある。前者はともかく、後者は何がきっかけで思いついたのか知りたいところ。この撹乱機から出るビームのようなものを照射させることで、不定形だった壁を固形化してドリルで壊せるようにしたり、敵の行動を弱体化させたり、あるいは漂う泡などを硬質化させて足場にすることができる。ほかにも入手できる能力は盛りだくさん。射撃武器もかなり多彩だが、有用性のあるものは限られる。
広いマップには隠し通路やアイテム、テキストなど探索しがいのある要素が盛り込まれ、地図埋め勢が楽しめる要素が詰まっている。

また、緻密なドット絵で描かれたグラフィックも魅力的。特に主人公の頭の中の声として探検をサポートする、人面を持った巨大な機械「ルサルキ」は、このゲームを象徴するヴィジュアルとしてインパクトがある。彼女たちは世界が栄えていた頃からの生き残りであり、その見た目はどこか神像のような感じすらある。

何体かいる「ルサルキ」の一体、Elsenova。
主人公を凌ぐデカさというのがよい。

主人公トレースにここで起こったことややるべきことなどを語ってくれるのだが、ストーリーが中盤に差し掛かり、敵が明らかになったあたりから、慇懃な態度の裏になにかを感じずにはいられなくなってくるあたりが面白い。世界観の細かい部分は、道中手に入る暗号化されたテキストなどで知ることもできる。それらはそのままでは読むことができず、入手したテキストを翻訳機にかけたり、パスワードを入力したりといった謎解きが必要。そうしたちょっとした遊びも謎を解いていく気にさせてくれる。

そして、このゲーム最大のスゴイポイントは、グラフィック、プログラム、音楽などのすべてをThomas Happ氏が一人で作り上げたという点だろう。遊んでみればわかるが、Axiom Vergeはとにかくどこを切り取っても丁寧で、手触りがいい。スピードランといったプレイヤーの遊び方を考慮したモードなども搭載している。すべてに目が行き届いている感じがするのだ。そりゃ開発に5年かかるわけである。
これだけ没入感ある世界が個人の手で作れるというのは驚きである。ゲーム自体が遊びやすく、「メトロイドヴァニア」の入門ソフトとしても面白さが全部入っていると感じる。
個人的な話だが、こんなゲームを個人で作ってみたいというのが密かな野望になっている。

そしてThomas Happ氏だが、現在この作品の続編「Axiom Verge2」を開発中のようである。ストーリーやキャラクターに直接繋がりがあるのかは不明だが、ジャンル的には同じメトロイドヴァニアらしいので楽しみである。