TV番組感想「密着! ネコの一週間」

2013年、イギリスBBC制作のTV番組。Amazon Prime Videoで視聴。
表題の通り、猫の一週間を追うという番組である。タイトルだけ見て内容を想像すると、かわいい猫の映像をなんとなく一週間ばかし追ってみましたと思うかもしれないが、実際は生命科学者、生物学者たちが猫の行動を本気で調査、検証するという、なかなか大掛かりな実験のドキュメンタリー番組である。

ただのネコかわいいな番組ではない。見よこのアカデミックな画を。

まず、実験対象となる猫は50匹。これは各地でバラバラに、というわけではなく調査対象同士が接触する、つまり一つの限定された区域の中での50匹である。ということで、実験にはサリー州シャムリー・グリーンという猫の多い場所が選定された。
まず、学者たちは村の集会所に飼い主たちを集めて実験の概要を説明。集会所はそのまま調査本部として使用する。猫好きな飼い主たちも、24時間常に猫を監視しているわけではないので、実際どうなのかは興味津々。猫たちには、アフリカの動物調査でライオンやチーターにつけるような、GPSと太陽電池つきの首輪を取り付ける。これで24時間の移動を猫の個体ごとに記録できるというわけである。
さらに町の中にカメラを設置したり、GPSで面白い挙動を示した猫には、個別に首輪にカメラをつけたりして実際に何を見ているのかを詳しく調査する。この首輪目線の画は、まあ当たり前だけどぶれるのだが、ペットフードの皿が大写しになったり飼い主を見上げたりとかなり猫の目線に近い景色を見ることができる。個人的には、ぶらさげた猫自身のひげがカメラに映っているのがかわいくて面白かった。

一つの村の猫50匹の行動分析は、個体ごとにかなりユニーク。上空画面から移動経路が線になっているのを単純に見るのは面白い。事前に飼い主の予想で「夜は出歩いていないと思います」なんてコメントとは裏腹に、猫用ドアを抜けてかなり広範囲を散歩していることが判明することも。郊外に住む猫は3キロ以上近所を歩き回ったりする中で、住宅地にいる猫はせいぜい50から100メートルだったりと、個体や生活環境によってもさまざまである。
また、住宅地の猫たちにとって最大の問題は縄張りに関すること。縄張りが重なる猫同士の行動を追跡したおかげで、猫たちが喧嘩を避けるためにお互いに時間をずらして鉢合わせしないようにして、交代制で縄張りを共有していることがわかってくる。小枝などに体を擦り合わせるのは、いつまで自分がここにいたかの痕跡を残すためだ。知識としてそれは頭に入っていたが、実際にデータとともに検証結果として提示されると納得感がある。
にしても、あの何も考えていなさそうな猫ですら喧嘩は割に合わないと認識しているのはちょっと考えさせるものがある。そんな中で、わざわざ森に狩りをしにでかけていたり、定期的に別猫が住む家にお邪魔してエサを失敬している猫がいたりと、24時間追跡したからこその場面が見られる。

というわけで、猫のほのぼのした姿を見ながら知的好奇心も満たせる良い番組。これほど住民の協力が不可欠なものを撮れたのはなかなか稀有なことのような気がする。過剰な演出もなく、45分程度の番組なので気軽に見られる。自分のように猫アレルギーで猫が好きな方も。

意外とでかいカメラを取り付けられるネコの図。首輪目線カメラは面白いのでぜひ見てほしい。

画像:© 2013 BBC

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B06XPT49Z4/