ゲーム感想「ラトロポリス」

Cassel Games開発、販売のタワーディフェンス・カードゲーム。
2020年12月にアーリーアクセスが終了し製品リリースされた。Steamなどでゲームを買っている人はご存知だろうが、アーリーアクセスとは開発途中のゲームを完成させる前に(そう明記した上で)販売する仕組み。
開発者は完成前にある程度資金が入る上に、遊んだユーザーの反応を見ながら開発することができる。また、大抵の場合ユーザーは完成品より安価でゲームを購入でき、意見を送ったり不具合報告したりすればそれが完成品に反映されることもあるので、使い方次第では双方にメリットがある。

本作はタワーディフェンスゲームとデッキ構築型ゲームを組み合わせるという、実に恐ろしいことを試みている。何が恐ろしいかというと、どちらも非常にリプレイ性と中毒性が高いゲームジャンルなのだ。
タワーディフェンスとは、自分の拠点に侵攻してくる敵に対し、周囲に戦力を配備して撃退していくゲームジャンル。敵はどんどん大群で多種多様になり、兵科の種類や配置位置など試行錯誤する面白さがある。
そしてデッキ構築型ゲームは、自分のカードデッキをうまく使って競ったり得点を稼いだりしていく、主にカードゲームの一種。こちらはプレイ中にカードを手に入れたり、より効果の高いカードに変化させるなどしてデッキを強化していく楽しみがある。ボードゲームの「ドミニオン」が有名だが、だいぶ前に感想を書いた「Slay the Spire」もこのジャンルをデジタル化したものに含まれる。

「ラトロポリス」の大枠はサイドビュー(2D)のタワーディフェンスゲームで成り立っている。
ラット(ネズミ)+メトロポリスというタイトル通り、栄華を誇ったが崩壊した大都市国家ラトロポリスを、指導者ネズミであるプレイヤーが新たな定住地に再び築くというもの。定住地の端には防壁が築かれているが、何もしないと外敵にすぐに破壊され侵略されてしまう。なので、どんどん兵士を配備したり防衛用の建築物を建てたりして敵の侵攻(ウェーブ)から都市を守るのがゲームの目的。
外敵は疫病ネズミという、ゾンビというかクリーチャー化したネズミのほか、イタチやトカゲなどの別の種族もいる。種族や兵種ごとに攻撃方法は様々で、切りのいいウェーブでは強力なボスも登場する。それらを撃破し30ウェーブ防ぎきればゲームクリア、逆に都市に侵入され、中央にある大樹の下に築かれた市役所が破壊されたらゲームオーバーとなる。

ゲーム序盤のスクショ。中央の建物が市役所で、左右に木の防壁、その内側に家や施設がある。
木の防壁をどんどん外に作って囲えば、その内側は領地になる。

当然、すぐに都市を防衛するべく資金を稼ぎながら戦力を配備していかなければならないのだが、ここでデッキ構築型カードゲームの要素が入ってくる。プレイヤーが取れる要素は山札から引いた手札のみ。タワーディフェンス系ジャンルの懸念として、兵種など取れる行動の量が多いとUIが煩雑でわかりにくくなりそうなものだが、本作はカードゲームのルールをうまく取り入れているのでそうはならず、かつ納得感もある。ここがまず巧いと思った。
カードは戦力となる軍事カードだけでなく、領地に建設する建造物カード、そしてそこで行う農耕や研究のような技術カード、お金に関わる経済政策のカードなど様々。基本は敵を退ける防衛が大事だが、それを増強するには都市としても繁栄させなくてはならない。まずはとにもかくにもお金と市民が必要。お金はカードの使用や売買に必要で、これがないと話にならない。また市民は戦力として配置する軍事カードや技術カードで使用される。
そして領地の拡張も必要。領地がないと防衛施設だけでなく家も建てられない。家が建つと市民の数が増え、税収も増える。税収は一定時間ごとに入ってくるお金。この3つを成長させていかないと、敵の猛攻を最期まで凌ぎきることはほぼ不可能といえる。カードの追加、拡張はウェーブ撃破報酬やイベント、売買などがある。提示される選択肢がプレイングごとに異なる上に、毎回引く手札も当然シャッフルされるので、プレイごとに違った都市が出来上がることだろう。
ゲームはタワーディフェンスらしくリアルタイムで進行していく。そのため、デッキ構築型ゲームでありながら、カードの使用順などを延々考えている時間はあまりない。カードゲームでは使用順を間違えると致命傷になるものもままあるが、今作はそこまで深刻なことにはならない。間違えたら、どんどんデッキを回してまたカードを引き直せばいいのだ。上記の理由で、デッキの圧縮(効率化)もさほど影響を与えないともいえる。
山札からカードを引いたら、決まった秒数は手札を変えるのにお金がかかるようになっているので、お金に余裕があればすぐにカードを引き直せるし、いいカードが出たらしかるべきタイミングが来るまでずっと引き直さずに待つこともできる。こうしたフレキシブルな判断を求められるのも、本作の面白いところだと思う。
タワーディフェンスとしても敵の侵攻が左右完全にランダムであり、さらに中ボスなどもプレイごとに変わるので、どう戦力や防衛施設を配置しても毎回勝ち筋に持っていけるとは限らない。このあたりが、2つのジャンルをうまくミックスさせているところだろう。

そして、プレイヤーはゲーム開始前に自分のキャラクター「指導者」を6タイプから選ぶことができる。指導者はそれぞれ固有スキルや、都市やカードデッキに効果を与える「助言者」が異なる。

指導者は「商人」「将軍」「建築家」「科学者」「呪術師」「航海士」の6タイプ。
初心者向けなのは「将軍」「建築家」。ほかは癖があるが使い方次第で強いと感じた。

そして、そのゲームプレイ内で登場するカードも指導者ごとに異なるのだ。たとえば商人指導者なら配置したユニットは雇用時間が過ぎると消えてしまう。将軍指導者の軍事カードは戦うことで強力な兵種にレベルアップするし、建築家指導者なら罠や迎撃兵器などが豊富など、指導者ごとにまったく異なった戦術を構築する必要があるのだ。拠点を置く定住地も一箇所でなくいくつかあり、森や砂漠、海岸などがある。ロケーションが違うと、当然登場する外敵が異なる。

というわけでかなりの遊びごたえと中毒性があるゲーム。ジャンルの掛け合わせは特に破綻しているところもなく、それぞれの元ジャンルとしてみても本来の面白さを損なわず新鮮なものになっていると思う。かわいらしいカードの絵柄のわりにゲーム難度自体は硬派で、1プレイは大体30分~1時間程度で、ついつい何度も遊んでしまう。おすすめです。

画像:https://casselgames.com/

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