ゲーム感想「スーパーマリオ 3Dワールド+フューリーワールド」

2021年2月12日発売のNintendo Switchソフト。マリオといえば言わずとしれた任天堂の看板キャラクターである。
「スーパーマリオ3Dワールド」自体は、2013年にWii Uソフトとして既に発売されている。自分は未プレイだったので、今回新たに追加された「フューリーワールド」と同時進行でプレイした。「3Dワールド」→「フューリーワールド」の順でまとめて感想を書いていく。

まず「3Dワールド」について。
ゲームシステム自体は、各ワールド上に配置されたコースを選択してそれらをクリアし、次のワールドへ進んでいく「スーパーマリオ3Dランド」などと同様の方式。各コース内にはお馴染みのゴールフラッグのほかに、グリーンスターと呼ばれる収集要素がある。ボスなど特定のコースなどはこのグリーンスターをある程度集めなければ挑戦できない制限があるため、ただ単純にコースをクリアするだけでなく、コース中を駆け回り、怪しいところを探索する必要が出てくる。
そのため、各コースはゴールまでの尺は過去作と比較すると短いが、そのぶん2D自体のマリオとは違った「空間」を感じられるようになっている。

ゲーム内スクリーンショット。ワールドマップ画面。
いくつか置かれたミニチュアのような場所が、各コースとなっている。

各コースの中身については、流石マリオシリーズというべきか安定して面白い。
各コースごとにテーマやコンセプトがあり、特色がつけられている。基本は易しめだが、終盤のコースは本当に難しくやりごたえがあり、特に落下や即死トラップがあるコースはマリオ独特の3D移動をしっかり掴んでいないと苦戦必死だろう。
コースネタで個人的に好きなのは「影の路地裏」というコース。影絵を使った遊びで、ゲーム画面とプレイヤーを挟んだ奥の壁に自機や敵、アイテムなどの影が映し出される。たまに目の前にはないのに影だけ存在するアイテムなどがあり、それをどう取るのかを考えさせるというのが楽しかった。
あとは新アイテム「ダブルチェリー」も面白い。ダブルチェリーを取ると、その場で自機が2人に分裂する。自機はどちらも操作を受け付ける上に、チェリーをさらに取得していくと3人、4人、5人と自機が増殖する。最後の1人がやられるまでミス扱いにはならないが、自分が想定した動きをしない分身がいると、わかっていてもかなりアワアワしてしまうのが面白い。数人で乗らないと効果がないスイッチなどもあり、なるべく多く生かし続けたまま進めようという気にさせてくれる。

アイテムについてあげたが、今作の目玉でもあるのが「ネコマリオ」だろう。
ひげのおっさんたちがネコに扮するという変身は随分思い切ったなーと最初は思ったが、最大の特徴として、壁のぼりができるという点が挙げられる。これによって障害として機能する壁が、道の一部になるわけである。この「壁を道に変える」思想自体は今となってはありふれたものだが、ガワを変える(ネコになる)ことで壁の上の探索という遊びへ自然と誘導する辺り、感心してしまう。
コース上に隠されたグリーンスターは、大体ネコマリオで登れそうな壁や山を登った上にあることが多いので、ネコマリオになれる状態でゲームを進めるのが一番効率的だと思うが、それを抜きにしても壁を登る仕草がかわいく、それ自体が面白く感じた。
また、フレンドとオンラインで4人で遊べるのも特徴。キャラクターはマリオの他にルイージ、ピーチ、キノピオと、ゲームの途中でロゼッタが加わる。何気にピーチがクッパにさらわれていないという、珍しいマリオだったりする。

次に、「フューリーワールド」について。
こちらは今作で新たに追加されたコンテンツで、内容を大雑把にいってしまえば、「3Dワールド」と「スーパーマリオオデッセイ」のような所謂「箱庭マリオ」をガッチャンコさせたようなシステム。「3Dワールド」の要素を使ってシームレスなオープンワールドを遊んでいくというものになる。
「オデッセイ」のようなライフ性ではなく、コースクリア型マリオのように○○マリオ→マリオ→ちびマリオ→ミスというシステムである。ただし、道中で手に入れたアイテムは各種5つまでストックすることができ、引き出して使うことができるので、あまりダメージが原因で死亡することは少ないのではないかと思う。こちらを遊んでから「3Dワールド」を遊ぶと、このストックシステムの便利さを感じずにはいられない。

「3Dワールド」の舞台は「ようせいの国」だが、「フューリーワールド」は「ネコ湖」という湖に浮かぶ島々が舞台。この世界は突然現れた「フューリークッパ」によって、タールのような黒いベトベトに覆われている。
一定時間が経つと巨大なフューリークッパが登場し、マリオ目掛けて炎を撒き散らしたり、口から熱線を出して攻撃を仕掛けてくる。フューリークッパはある程度暴れると帰っていくが、出現中にマリオが「ネコシャイン」(ネコ湖におけるグリーンスターのような存在)を獲得することでも撤退させることができる。
また、ネコシャインを一定数入手すればギガネコベルという巨大なベルが解放される。フューリークッパが出現したときにそのベルの元まで行くと、マリオが巨大な「ギガネコマリオ」になり、大怪獣バトルのような戦いを繰り広げることができる。ここでクッパを撃退すれば、大幅に世界を覆うベトベトを消すことができる。こうしてクッパの攻撃をかいくぐったり撃退したりしながら、ネコ湖のベトベトを取り除いていく(&クッパをもとに戻す)のがゲームの主な流れ。ちなみに今作ではいつもは敵であるクッパ.Jrと共闘する形になる。クッパ.Jrは「オデッセイ」の帽子のようにローカル2Pで操作することも可能とのこと。

ゲーム内スクリーンショット。嵐とともに湖上に現れる
フューリークッパは、マリオがどこにいようと攻撃してくる。

「フューリーワールド」の面白さは、「3Dワールド」にあるゲームルールのリミッターを解除していった点にあると思う。
まず、前述のとおりに箱庭なため、「3Dワールド」のようなコースはない。もちろんコースらしきもの、敵がいてアイテムがあり、ジャンプなどのアクションを要する場所が密集した場所は存在するが、それらの周囲(コース外)とはそのまま地続きで繋がっているので、やめたくなったらいつでもそこから脱出することができる。
またゴールフラッグがなく、同じコースを何度も探索して複数あるネコシャインを収集していく。これは箱庭マリオの要素だが、このシームレスであるおかげかリトライしやすく、コース型マリオのアクション要素が密集した設計とうまく融合している。
そして周囲とシームレスである最大の利点が、コース中の落下がなくなったということだと思う。これは「3Dワールド」の方でさんざん落ちミスしまくった人にとっては実にありがたい。コース外に敵はほとんどおらず、フューリークッパがいなければ基本的には安全である。また「3Dワールド」で固定パターンにしか動かせなかったカメラも自由に回せるので、視認性が原因でミスすること自体も少なくなっている。
そもそも「フューリーワールド」に残機の概念はないので、ミスはあまり気にせずに探索とアクションを楽しめる。しかし、ただぬるいかというとそうでもなく、コースはフューリークッパがいるときだけ出現する足場や、クッパの攻撃によって壊せる障害物などがあるため、ネコシャイン入手のためにクッパが襲来しているときにステージにあえて挑まなくてはならないなど緊張感はある。

「フューリーワールド」は、クリアするだけなら「3Dワールド」ほどボリュームはない。これは単純に「3Dワールド Switch版」のおまけ要素であることや、フューリークッパ襲来というゲームの根幹仕様が、回数をこなすほどに慣れてきてしまうためというのも理由だと思われる。
しかしながら、箱庭マリオとコースクリア型マリオ双方の要素を組み合わせることで、「3Dワールド」とは別の遊び心地になっており、こちらを遊んでいると「ゴールしなければならない」コースクリア型マリオのゲーム性は、実は窮屈なのではないかという気にもなる。フューリークッパの存在も、のんびりしたゲーム性に対する良い刺激になっており、おまけとはいえやはり丁寧に作られている。

というわけで、元は7年前のゲームとはいえ、おまけを含め今でもアイデアなど新しさがあり、面白かった。
3D、フューリーのどちらにも共通するのは、ゲームのレベルデザインが基本的に難しいコースをクリアするという「難関の克服」的楽しさより、コースのネタやもっとミクロな部分で楽しさを感じるように作られている点だと思う。特に効果音に関して、連続で踏むとかコインをすべて取るとか、細かいアクションを成功させた、というのを実感しやすく作られているように感じた。
もちろん「クリアしてみろや!」という開発者からの挑戦状のような難しい場所もあるので、ライトゲーマーから上級者まで、幅広い人が楽しめると思う。

最後に個人的に気に入った細かな点をあげておくと、ギガネコマリオになってクッパと戦うときの大怪獣バトルの「巨大感」。特にそれまで遊んでいたコースがミニチュア化するところがかなり細かく作ってあるのだが、あのいかにもアスレチックな建造物を遠方から俯瞰して見るというのは実はゲームであまりなく、しっかりとマリオの世界で巨大化している感覚を味わえる。
もう一つは、ネコ湖の住民とおぼしきネコたちがかわいい点である。住民ネコたちはマリオが近づくと逃げてしまうのだが、自分がネコマリオだと仲間だと思って近寄ってくる。非常に和む。

ゲーム内スクリーンショット。
住民ネコの挙動はかわいく、マリオに体を擦り合わせたり後をついてくる。

公式ページ
https://www.nintendo.co.jp/switch/auzpa/index.html