映画感想「 トゥモロー・ウォー」

2021年、Amazon Prime Videoで配信されたミリタリーSFアクション映画。クリス・プラットが主演と製作総指揮を務める。Amazon Originalと表記されているが、Wikipediaによると元々はパラマウントが制作し2020年末に劇場公開予定だったが新型コロナウィルスの蔓延によって断念、公開権をAmazonが買い取っての配信ということらしい。

主人公のダン・フォレスターは元軍人で現在は生物の高校教師。研究職に就きたいがうまくいかずに落ち込むも、最愛の妻と一人娘のミューリがなぐさめてくれるなど家族仲は良好。ただし、自身の父親(J・K・シモンズ演)との関係は最悪。
事件は、クリスマス・パーティーでサッカー中継を見ているときに起こる。サッカースタジアム内に突如眩い光とともにワームホールが出現、30年後の未来から兵士たちがやってきたのだ。彼らの話では、30年後の人類は突如出現したエイリアン「ホワイトスパイク」によって絶滅寸前まで追いやられているとのこと。数十億人いた人口は50万人に減少しており、未来から過去へ戦力不足を補うために来たのだという。
こうして、毎週数千人の人類が未来へ送り込まれるようになる。兵士に適合するかは条件があるらしく、始めは軍人のみだがすぐに一般市民が「徴兵」されるようになり、主人公ダンの元にもその通知がくる。実は未来へ行けるかについては「2051年までの間に死亡する人間」が条件(未来の自分に会わないように、ってことらしい)で、なんとダンは審査に合格。簡単には取り外せない転送装置を腕に取り付けられてしまう。妻に促され、疎遠の父親(どうやら転送装置を外す「兵役逃れ」の闇ビジネスをしているっぽい)を頼るも結局喧嘩別れし、家族(特に娘)の未来を守るため、2051年へ戦いに行くことになる。

上空にできたワームホールに吸い上げられていく、徴兵された人々。
未来は絶滅寸前ということ以外何も情報がなく、観ている側もなかなか不安。

と、なかなか本題の「未来に戦いにいく」まで情報や関係性を見せて引っ張るのだが、作品を端的にいってしまえば「エイリアン」「戦争」「家族愛」といういかにもハリウッドなテーマに、さらに「タイムトラベル」が乗っかっているというよくばり映画。お金がかかっているという意味で大作である。
タイムトラベルというトリッキーさはあるものの、内容は基本的にはその手の名作でやられてきたようなことが展開される。登場するクリーチャーも基本的には知性がなく、動きこそリアルだがその造型も含めて映画全体としてお約束的というか、どこかで見たことがある仕上がりに感じた。
「一般人が突如徴兵されるようになったら?」という設定も社会実験な意味で興味深いが、物語としては主人公個人の話や、戦争という名の壮大な害虫駆除がメインなので、その点(徴兵の是非など)に対してあまり深堀りはされない。目を背けたくなる展開などはなく、あくまでこの手の映画の王道的な「見ていられる戦争」という範疇にとどまる。
ただ、クライマックスで目を見張るような戦闘が繰り広げられたのは嬉しい誤算だった。具体的には伏せるが、それまでの全ての犠牲者の無念と恨みをぶつけるかのごとく戦う主人公ダンと、生存本能に従って何が何でも生き延びようとするクリーチャーの死闘は正直素晴らしいといわざるを得ない。あの戦いがなかったらこの感想も書いていなかったと思う。

最後の戦い。吹雪の中、背中合わせになり奇襲に備える。
このシーンだけ何かが振り切れているくらいカッコいいしアガるのだ。

というわけで、戦争SFアクションの代名詞ともいえるようなテーマを積んで作り上げた作品。お約束的な展開もそれなりに楽しめるが、特に最後は個人的には大満足で、終わりよければ全て良……くはならないけど、数年後にこの映画のどこが良いかと聞かれたら間違いなくラストと答えるぐらいには自分の記憶に残っているのではないかと思う。

画像:© 2021 Skydance Productions, LLC and Paramount Pictures Corporation

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B095KT69ZN