ゲーム感想「メトロイド サムスリターンズ」

2017年にニンテンドー3DS用ソフトとして発売された2D(横スクロール)アクションゲーム。
「メトロイド」シリーズは任天堂のIPのひとつで、「メトロイドヴァニア」というゲームのサブジャンル名の由来にもなった、探索アクションの代名詞的存在である。主人公はゴツいスーツに身を包んだ女性バウンティハンター、サムス・アラン。「大乱闘スマッシュブラザーズ」を遊んでいる方には登場キャラクターとしてお馴染みだろう。また、派生作品として2DアクションでなくFPS(一人称視点STG)になった「メトロイドプライム」シリーズがある。本作は、1992年にゲームボーイで発売された「メトロイド2」のリメイク作品となっている(アメリカでは91年)。

ゲームを開始すると、オープニングでストーリー、世界観についての簡単な説明がある。初代「メトロイド」の物語についても触れられているが、知らなくてもほとんど問題なく遊べると思う。ざっくりいうと前作でメトロイドという危険な生命体の存在が明らかになったため、今作でメトロイド殲滅の命令を受けたサムスが舞台となる惑星SR-388にやってきた(メトロイドがわんさかいるらしい)、とのこと。
「メトロイド」の凄いところは、主人公の目的や状況などがよくわからなくても、遊んでいて面白い点にあるのではないだろうか。それは世界観設定やグラフィックが優れているともいえるのかもしれないが、それ以上に物語的動機を必要としないくらいゲームデザインがよくできているのだと思う。

そのゲームデザインについてだが、25年越しのリメイク作品というだけあって仕様はかなり現世代向け。自分がだいぶ前に元となったゲームボーイ版を遊んだときは、複雑な迷路のようなマップ構成にもかかわらず今のゲームのような地図機能もなく延々迷い続けた記憶がある。そうした時代にそぐわない部分はしっかりとサポートされており、地図は3DSの下画面で常にマップ表示されている(スタートボタンで非表示部分を見ることも可能)。さらに武器切り替えなども下画面タッチで行え、じっくりマップや状態を見たいとき以外はメニュー画面をあれこれする煩わしさもない。これは実に2画面ハードの強みを活かしている。
ゲームの流れとしては、入り組んだダンジョンを探索しながらメトロイドを撃破していくという探索アクションとしては基本的なもの。要所要所にある古代人の遺した巨大なボードのようなものに、倒したメトロイドから入手したDNA情報(?)を必要な数だけ注入することで、地下にたまった毒液の水位が下がり、奥へ進めるといった仕組みになっている。
基本操作は、左右移動、ショットによる攻撃、ジャンプなど。ショットは通常だと8方向だが、本作にはフリーエイムという仕様があり、Lボタンを押しながらだと自機の移動を固定した状態で360度好きな方向に撃つことができる。この操作が実に使いやすく気持ちが良いのだ。入力がアナログスティックなのだからできて当たり前にも思えるが、2Dのシューティングゲームでは基本的に自分の射線(ショットを当てられる範囲)を自機の移動によって相手の位置まで持っていくのが当たり前だったので、結構革新的だと思う。

その場にいながらどの方向にもガンガン撃てるフリーエイム。
ジャンプ撃ちのようなテクニックを必要とせず戦える。

また、本作追加された仕様でメレーという機能がある。これが非常に素晴らしい。メレー(Melee)、つまり近接アクションなのだが、これでガンガン敵を叩くというよりは、相手の攻撃に合わせて打ち返すカウンターとして使用する。メレーによるカウンターが成功すると相手はスタンしつつ弱点を晒し、さらに勝手に敵に照準を合わせてくれるので、「弱点を狙って撃つ」というシューティングアクション的な過程をすっ飛ばして大ダメージを与えられる。ザコ敵なら大抵1撃だし、ボスに対しても非常に有効なアクションとなっている。
リターンが非常に大きい行為だが、失敗すると敵の攻撃を受けることになるのでリスクとの釣り合いもしっかり取れている。カウンターの結構受付時間は結構長く、敵がカウンター可能な攻撃を繰り出す際にはこれみよがしなモーションを取りさらに直前で光るので、何度やってもタイミングが取れず失敗、ということはないと思う。突然の奇襲に反応できたりすると、非常に爽快である。個人的には複数の敵が一度に襲ってきた場合の対応に不満は残るものの、遊び心地は初出とは思えないほど仕上がっていると思う。

突進してきた敵に対してメレーカウンター。
重要なアクションながら、操作は非常に簡単で気持ちが良い。

その他にも、エイオンアビリティという特殊能力のようなものも存在する。これはHPとは別のゲージを消費するもので、攻略に必要なものから攻略をアシストするものなどがあり、重要な要素。特に周囲のマップの形状の視覚化や、壊せる壁や床、天井を知らせるスキャンパルスは最初ちょっと「便利すぎでは?」と思ったが、これがないと脱出ができなかったり今まで行った場所をもう一度総当りで探したりする羽目に遭うので、結果的にはめちゃくちゃお世話になった。基本的にエネルギーは敵を倒せば回復できるのでゲージ不足で困る場面は少ない。またフル回復するエネルギー球が設置された場所もあり、そういうところは「能力使え」というさりげないヒントになっていることも多い。

本作のこの遊びやすさは、おそらく2Dアクションゲームや探索アクションゲームを遊んだことがない人に訴求するように作られているのではないかと思う。特に今作は前述したフリーエイムやメレーカウンターなどの仕様により、従来の2Dアクションにおける「狙って撃つ」といった部分を簡略化しており、シューティングアクションとしての歯ごたえよりも探索に集中して欲しいという意図が感じられる。また、スキャンパルスも初めて来た場所などでもとりあえず周囲の大まかな地形を把握するのに役立つので、難しかったりやることがわからないといった状況を防ぐのに一役買っている。
お約束の能力解放についても、特に「行けなかった場所に行けるようになる」という探索アクション(もしくはメトロイドヴァニア)の気持ち良い部分をすぐに味わえるよう、移動範囲が拡張される要素の登場スパンが短めに感じた。全体的に探索のしやすさに傾いているが、それでもジャンルの草分け的存在としての矜持なのか、やはりレベルデザインは恐ろしいほど考えられていると思う。画面内にはサムスがいる位置から繋がる進むべき道だけでなく、いわゆる隠しアイテム「だけ」が隔離された場所に見えており、プレイヤーに「どうやってあそこに行くか」を常に考えさせる設計になっている。これはサイドビューならではの遊ばせ方だろう。どの障害がどの能力で突破できるのかがわかりにくかったり、ザコ敵があまり印象に残らないといった部分は個人的に気になるものの、手触りは遊びやすく、ダンジョンの密度は濃いしボス戦闘はしっかり手強い。この手のゲームとしては理想の配分だと思う。

というわけで、昔を懐かしむリメイクを作ろうというよりは、むしろ現代向けに改良を施しまくって新規ファンすら取り込もうという意欲がうかがえる作品。新仕様の数々は、2Dアクションにまだまだ進化の余地があると感じさせてくれる、クオリティとしては文句なしの「メトロイド」。
個人的にはスパイダーボールを獲得したときの、壁や天井にまで探索範囲が広がる具合がやっぱり素晴らしいと思った。横スクロールアクションなんて古臭いと思っている方にこそおすすめしたいゲーム。とはいえ今3DSか……と思った方、2021年10月にはNintendo Switchで2Dメトロイド新作「メトロイド ドレッド」が発売するので、そちらを遊んでみてはいかがだろうか。メレーなど、本作からの仕様はトレーラーで確認できたので、おそらく本作に近い遊び心地なのではと勝手に期待している。

画像:https://www.igdb.com/games/metroid-samus-returns/presskit

公式サイト
https://www.nintendo.co.jp/3ds/a9aj/pc/index.html?nt_redirect_referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2F&rd

「メトロイド ドレッド」公式サイト
https://www.nintendo.co.jp/switch/ayl8a/